GWが終わり、5月2週後半を迎えました。
次週、5月3週から6月1週にかけては、急に課題提出や小テストが各教科出されはじめます。
・どうして急に小テストや課題が増えるの?
・各教科同じくらいの時期に実施しないで、時期をずらしてくれたらいいのに…
そう思う方も多いと思います。
今日は
・5月に課題や小テストが急に増える理由
・どれくらい重要なのか
について書きたいと思います。
5月3週から急に課題提出や小テストが増えるのは、そこしか資料収集できないから
ひと言で言うと、「この時期に評価資料を集めなければ、他に集められる時期がないから」です。一般的な、評価に関わる学校のスケジュール、先生方の意識は、以下のようになっています。なお、このスケジュールは3学期制を導入している学校のものになります。2学期制の学校は、若干違いますが、基本的なスケジュールはだいたい同じです。
学校のスケジュール、先生方のスケジュールから、5月の重要性が分かる
※筆者のシミュレーションです。現実と必ずしも一致するとは言えません。
4月:
新学期スタート。諸活動で先生方は授業の準備をする余裕なし。(残業も相当しているはず)
→授業なかなか進まない。学活や全国テストなどもあり。一年生は学校に慣れるまでややゆっくり授業を進めてあげたい。
→評価資料はほとんどとれないことが多い。連休前後にかろうじて小テストを実施できるかな。
できれば連休前にレポートを出して、連休で採点したい。(残業ではあるが)
5月:
連休で勉強させて休み明け小テストを実施したい。
5月2週から6月1週までに評価資料を取らないと資料不足になって、評価・評定が出せない!
課題や小テストをやっておかなければ…。
提出物の提出状況評価、提出物の質の評価もこの時期にやらないと間に合わない。
旅行的行事もあり、授業が少ない。旅行の事前・事後学習の準備も教科の準備以上に大変。
果てしなく評価に時間を費やすような課題を集めても、採点する時間がない。
6月:5月31日か6月1日あたりに試験範囲発表が多い。
6月1週は定期テスト作成。できるだけ早くテストを作ってしまいたい。テスト範囲を終わらせるために授業を進める必要がある。同時に、評価資料を取るならこの週までになんとかしたい。
6月2週。定期テストは遅くとも週末までには完成させたい。評価資料も取りたいけど、テストづくりや授業を進める必要があるから、難しいかも。
6月3週は、今週は定期テストがあるから、直前に生徒の負担になる小テストや課題提出はできればやめてあげたい。テスト前にワークを集めたら生徒が家庭学習に困るから、ワーク回収はテストの日に設定するしかない。テストが終わったら採点に数時間、提出物チェックに数時間。夜や休日に超過勤務でやるしかない場合も。中体連などもあり、6月3週の土日は、大会と採点でつぶれることが多い。(先生方お疲れ様です…)
6月4週は、評価資料が不足している場合、追加して課題や小テストの必要が。テスト返却を金曜日までには終わらせたい。ここまでの評価資料の数値を評価ソフトに打ち込み。間違いがないか何度も点検。中体連の大会もある。練習も見てあげたいが、なかなか行けない。
7月1週。だいたいこの週までに出そろったデータで1学期の評価は算出。いよいよ評価資料がない場合、追加で小テストが入ることも。あるいは、もうこのあたりの評価資料は、2学期の資料として実施しているかも。
7月2週。評定が間違っていないか厳格にチェック。仮評定算出ひとまず終了。来週の懇談の準備もあるので、評価の作業は期日通りに。できれば少しでも早く終わらせたい。
7月3週。仮評定を参照しながら、期末3者懇談に臨む。
こうしてみると、1学期の評価資料は、5月に集めるしかないのです。
だから、急に課題・小テスト・レポート・スピーチなどが増えるのです。
この時期の課題や小テスト、どのくらい重要なの?
簡単に言うと、「多くの人が思っているより、何倍も重要!」です。
評価・評定の算出の仕組を理解すれば、重要度はわかる
重要である理由を、数字を使って説明します。
※注:評価方法は各学校によって様々です。算出方法も何種類もあります。筆者の予想であることを念頭にお読みください。それでも、課題や小テストの重みは伝わると思い書いています。
一般的にいう「成績」は、「評価」というものを数値化して、出てきた「評定」のことを言います。
「評価」は、3つの種類(→「3観点」と呼ぶ)に分けられます。
それは、
「知識・技能」
「思考・判断・表現」
「主体的に学習に取り組む態度」です。
ざっくり「知識」「応用」「態度」と言い換えます。正確な言い換えではないですが、わかりやすいようにここではそう呼びます。
その3観点でとった点数を全部足して、何%に達したかで成績をつけていると考えてください。
※なお、この方式は一つの例です。このほかには、各観点のABCの出方により評定を算出する方法などもあります。それでも、どの方法で成績を算出していても、課題や小テストの重みが一般に認識されている以上に重い、ということには変わりがないと考えています。
3観点のうち、定期テストを評価資料にしやすいのが「知識」。その次は「応用」。
いっぽうで、「態度」は、多くの学校は定期テストでは一切見ません。
1学期で集める資料全てを、大きな一つのテストと考えてみましょう。
このテストは、
「知識」100点/
「応用」100点/
「態度」100点/計300点満点。
この300点満点のテストを、どの位の割合で得点できたかで「評定(→54321)」が決まると考えてください。
※一例であり、この方法によらない評価評定算出方法はたくさんあります。
それぞれの観点の、評価資料の中身を、よくある割合で「モデル」として書き出します。
※一例であり、この割合とは違う比率で評価評定算出されている場合もたくさんあります。
「知識」 定期テスト60点
小テスト①20点
小テスト②20点
「応用」 定期テスト40点
小テスト③スピーチ等20点
課題①20点
レポート①20点
「態度」レポート①の感想部分20点
振り返りレポート①20点
出るところが示されたテスト①20点※
提出物①20点
発言・話し合い20点
※出るところが分かっているのだからやればとれるはず、という意味で、「態度」の評価資料をとるために出されることがあるのだと思います。
この「大きな一つのテスト」の結果が、概ね下の達成率に近い基準を使って「評定」に変えられます。
※ここも各学校の基準によります。参考まで。
85%以上→255点以上(300点満点):5
70%以上→210点以上(300点満点):4
50%以上→150点以上(300点満点):3
25%以上→ 75点以上(300点満点):2
25%未満→ 75点未満(300点満点):1
評価と評定の関係:さまざまなシミュレーション
評定「3」を取りたい場合
先ほどの表を、定期テストの難易度別に、ちょっと書き換えます。
※あくまで一例です。
「知識」
定期テスト易しい問題20点…➊漢字、用語等
定期テストやや難問題20点…❷
定期テスト難しい問題20点…❸
小テスト①20点…➍落とすと5は遠い
小テスト②20点…❺落とすと5は遠い
「応用」
定期テストやや難問題20点…❻
定期テスト難しい問題20点…❼
小テスト③スピーチ等20点…➑6割の出来多い
課題①20点…❾人並みだと6割
レポート①20点…❿人並みだと6割
「態度」
レポート①の感想部分20点…⑪ありきたり→点数は半分
振り返りレポート①20点…⑫6割程度の出来多い
出るところが示されたテスト①20点…⑬満点近く取りたい
提出物①20点…⑭出さなければ大ダメージ
発言・話し合い20点…⑮参加だけでは点数低い
3を取るなら、このうち、8項目で満点をとれたらOK。
どこを取りますか?
多くの人が、大事だと思っているのは、➊❷❸❻❼つまり、定期テストです。
いっぽうで、軽く見られがちなのは➍❺➑❾❿⑪⑫⑬⑭⑮。
❸❼は、もちろんとれるように頑張りますが、みんなが満点取れるようになるかというとそうとは言えない。難しいものもありますからね。
確実に取りたいのは、➊❷➍❺❻➑⑪⑫⑬⑭⑮。これらが満点なら、すでに「4」が見えてきますね。
定期テストは60点程度でも、「4」がとれる人は、みんなが軽く見てしまう➍❺➑⑪⑫⑬⑭⑮をしっかり準備して取り組んでいる人です。
「5」を取りたいのに…
5を取りたいのに、なぜか4にしかならなかった人のケースを見てみましょう。
・定期テストの合計が90点だったとします。
➊❷❸❻❼の合計が90ですね。
5を取るためには、255点以上が必要。
逆に言えば、落としていい点数は45点。
定期テストは90点でした→10点落としました、ということ。
落としていいのは、残り35点。
・一度、提出物を未提出にしてしまいました→マイナス20点/残り15点
・対策せずに小テストを受け、半分しかとれませんでした→マイナス10点、残り5点。
・話し合いの時、可もなく不可もないレベルでしか話し合いに参加できませんでした。
こういう場合、よくつけられるのは「6割」という点数→20点中12点→マイナス8点。
→これでは、もう「5」はとれません。
定期テストで90点を取れても、95点を取れたとしても、他で上記の程度でのミスをしてしまえば「5」ではなくなってしまうのです。
ここから言えることは
・日常の提出物や小テストが、思っているよりもはるかに評定に響く!
・テストの難問を解く努力より、小テストやレポートでいい点数を取る方がずっと簡単な場合が多い!
・テストという形式が不得意な人も、レポートなどを正しい方向性で取り組めれば、カバーできる!
ということです。
生徒、特に中学1年生は、また、3年生であっても、この仕組みをしっかり理解している人は非常に少ないです。
保護者の方も、感覚的には平常の提出物などは大事だと理解されていても、このように数字で見ていくと「これほどまでに比重が大きいのか」と驚かれる方も多いのではないかと思います。
塾などでも、ここまで詳細な情報はあまり押さえていないと思います。日本全国のさまざまな塾のホームページで確認しましたが、学習指導要領を読み解いた形で解説しているものはあれど、学校現場や地域の実情を加味した情報を公開しているものは見つけられませんでした。
まとめ
今回は、5月の課題・小テストが定期テスト以上に重要である理由について、評価・評定の算出方法をお伝えしながら、数字を使って説明しました。
評価の回数が増えれば、一回の評価資料の重みは薄まりますし、全ての学校がこのような算出方法をとっているわけではないということは、改めて強調したいところですが、
・一つの課題、小テストをミスしてしまうと、300点満点でいうところの10点程度失うこともある。
・未提出なんてしようものなら20点程度失う。
・その10点、20点は、定期テストでとる10点、20点と同じくらいの重みを持っている。
こういうことは普通に起こりうるということです。
多くの学校で、4月の各教科の最初の授業や、最初のPTAの全体会、学年PTAなどの場面で、この説明はします。
ですが、この内容を、明確に保護者の方にお伝えすることができているという実感は、教員時代の私にはありませんでした。
見ていただいた通り、なかなか複雑な部分もあります。評価の算出方法もどんどん変わりますし、同じ学校でも、教科によっても違いはあります。数字を使って説明する必要もあります。限られた時間でお伝えするのが非常に難しいのです。
私の思いとして、子どもたちに単に楽をしていい点数を取ってほしい、という動機でこのことを公開しているわけではありません。「目先の評価・評定の対策」というものの奧に、こんな願いを乗せています。
・物事の全体像、実情を知っていれば、いたずらに不安がらなくていい。
・これは、大人になってから出会う課題でも一緒。サッカーの分析も一緒。
・単に狭い意味で学校の成績を上げるためでなく、生きて働く力として、「全体像を理解する」「仕組みを理解する」ということの大事さを伝えたい。
・どうせ努力するなら、やみくもにではなく効果がある努力をさせてあげたい。(正しい方向で努力を)
・人に聞く、人に会うことで目の前が開けることは大人になってからも多い。正しい情報を取りに行く行動をしてほしい。
・勉強の不安から解き放たれ、「自分の好きなことに夢中になれる中学生活を送ってほしい」
そのような思いで情報発信をしています。
同時に、かなり厳しい環境で生徒のために働いている先生方の負担を軽減したい、という思いもあります。
先生方に対して直接的に支援できることは、本当に少ないです。そのことに私自身悔しい思いをしています。
でも、生徒の皆さんが、自分で目標を立て、学習をおろそかにせず取り組むうえで、自分の好きなことに打ち込む姿は、先生方に活力を与えることでもある。このことは経験から十分知っています。
子どもたちの学習サポートは、子どもたちも先生方も支える活動になると信じて活動しています。
自分の経験を活かし、子どもたちのために、また少しでも先生方のためになりたいという思いで、情報発信をしていきたいと思います。
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